メインコンテンツへ移動
「泌尿器科医が、StartUpWeekendに参加した理由 〜起業しなかったから見えた、新たなる挑戦の可能性〜」 のカバー画像

「泌尿器科医が、StartUpWeekendに参加した理由 〜起業しなかったから見えた、新たなる挑戦の可能性〜」

公開日 2026年4月20日

Startup Weekend Kushiro

プレイベント

2026/5/16 (土)

本番イベント

2026/6/19 (金) - 2026/6/21 (日)

Startup Weekend 釧路(以降、略称「SW釧路」と表記)は、週末の54時間でアイデアを形にす る起業体験イベント。最終日にはビジネスアイデアの発表を行うが、必ずしも、それらが実際に事業として継続されるわけではない。

では、"続かなかった挑戦"には、果たして意味がないのだろうか。
実は、結果的に起業しなかったものの形を変えて伝播した、様々なアクションの形がある。
今回は、まさにロールモデルと言える存在である、SW釧路2ndの優勝者•泌尿器科医師の「野々山 将(ののやま しょう)先生」を取材。
医療現場での実体験をもとに起こしたアクションが、先生ご自身だけでなく、周囲の人へと、どん な影響をもたらしたのか。本記事では、先生の当時の想いや今後の展望をインタビュー。結果的 には「起業しなかった」からこそ、実は新たに挑戦の連鎖が生まれていた。

#1.泌尿器科医が、なぜ起業体験イベントに参加したのか

佐々木:この度は、インタビューをご快諾いただき、ありがとうございます!いろいろとお聞きできたらなと思いますので、よろしくお願いします。

しょう先生: 佐々木さん、お久しぶりです!釧路でお会いした泌尿器科の野々山です。私でよければ喜んでお受けします。よろしくお願いします。

佐々木:SW参加当時(2023年10月)は釧路にお住まいで、現在は神奈川の病院に勤務されているとお伺いしました。まずは直近のご状況について、簡単にお聞かせいただけますか。

しょう先生:残念ながら、起業関係ではアクティブに動けてはいないのですが……釧路での勤務後は旭川、横須賀の病院で泌尿器科医として勤務していました。

来年からは、ご縁があってオーストラリア・メルボルンの病院に医師として海外赴任することになりそうです。

佐々木:勤務歴はもとより、海外赴任まで決定していらしたとは驚きです!釧路SWが初めての参加だったとのことでしたが、どういったキッカケがあったんですか?

しょう先生:イベントを知ったきっかけは、友人がたまたま千葉県でやっていたスタートアップウィークエンドに参加していたんですね。その時の経験をFacebookに投稿していてこのイベントの存在を知りました。その時から「いつか参加してみたいな」っていう気持ちはありました。

SWにおいては、週末だけで参加者は、アイデアをカタチにするための方法論を学ぶ。

スタートアップって、そもそも何なの?

チームビルディングって?

ビジネスモデルって、どうやって形にするの?

年齢制限や参加条件の厳しい制約は、基本的に存在しない。

SW釧路第2回においては高校生が、最年少の参加者だった。

アイデアに共感したメンバーと共にチームを組み、最終日の夕方までにユーザーエクスペリエンスに沿った必要最小限のプロダクト、そしてビジネスモデルを一気に作り上げる。

#2.忙しくても、挑戦した理由——社会人5年目の決断

佐々木:SWには元からご関心があったとはいえ、2023年には既に泌尿器科医として働いておられたとなると……金・土・日の54時間の拘束時間って、実は結構なハードルに感じていませんでしたか?

しょう先生:自分もまあ、社会人になって働き始めて……ええと、5年目ですかね、仕事にも慣れてきて、「他のことにも、チャレンジしてみたい」と思う年頃というか。自分の中でいろいろ、普段の仕事の中で課題に感じていることがあって。

そこを何か、いろんな人の力を借りながら解決できるようなことが何かないかなと思って、参加した次第です。

佐々木:今日も、つい先ほど病院での急患対応を終えたのち、インタビューに応じてくださっている訳であり。

大変お忙しい中で時間を割いてくださっていて、ほんとうに頭が下がるばかりです……。

お仕事終わりに、夜遅い時間帯にも関わらず、快く本記事のインタビューに応じてくださった。

#3.実は、SWの初日が"運命の分かれ道"だった

SW初日には、自分の考えたアイデアを発表する「1分間アイデアピッチ」が行われる。

自分がいかにその課題に情熱を持っているかを限られた短い時間の中で、会場内の全員に語り掛け、チームメンバーとなってくれる人を募る。

しょう先生は当時、どんな思いを胸にピッチに臨んだのだろうか……?

佐々木:1分間ピッチの内容を決める際、時間制限ぎりぎりまで、真っ白な紙を見つめて、じっと悩んでおられた記憶があります。あの時、どういった心境だったんですか?

しょう先生:実は、自分の中にはあの時、2つの考えがありました。

ひとつは「日本語が母語でない人が十分な医療にありつけない、日本の医療現場の課題」、もうひとつは「自分自身が痛感していた、精巣がんの臨床現場における課題」です。

どちらを選ぶか迷いましたが、後者を選びました。

佐々木:そうだったんですね、勝手なイメージで「精巣がん」にのみ最初から的を絞っていたのかと思い込んでいました。あくまで、どのように話すかで悩んでおられたのかと、てっきり。実際には、医療現場での複数の課題感があったとは……。

しょう先生:精巣がんは早期に治療すれば助かることが多い病気ですが、プライベートゾーンの問題であるからか病気についてはあまり知られていません。

以前、私は実際に精巣がんを発症した若い患者さんの診療を担当しましたが、来院された際には既に病気が進行しており、残念ながら治療の甲斐なく亡くなられました。

臨床現場での私の実体験と強い思いは、SW参加者の皆さんにも届くはずだと考えたため、「精巣がんをもっと知ってほしい」という内容でピッチしました。

過去4回の釧路開催の中でも、第2回開催時はパッションに溢れる参加者が多かった。

「ぜひ、私と一緒にチームを組みましょう!」というラブコールが飛び交い、

オーガナイザー(運営)の役に専念する予定だった人がプレイヤー(参加者)に転身した末、最終的には、個性的な4つのチームが誕生した。

SWでは、ピッチと個別のプレゼンを経たのちチームが結成され、2日目の朝を迎える。

具体的なビジネスのアイデアを形作るべく、しょう先生が率いた「優勝チーム:たましる」は、どんなアクションを起こした結果、栄冠を獲得するに至ったのか。その秘訣に迫る。

佐々木:しょう先生のチームは、終始とても和やかな雰囲気がありました。ピボット(アイデアの方向転換)をすることなく、真っすぐに進んでいましたよね。

しょう先生:私たちのチームメンバーは、高校生が先陣を切って動いてくれたり、大学生がスライド資料を的確に直してくれたり、社会人で教員歴のあるメンバーは、教育現場の視点から意見を出したりしてくれていました。

佐々木:なるほど、高校生、大学生、社会人という肩書きの違いだけでなく、コミュニケーションの取り方や、個々のスキル・経験の面で見ても、非常に良いチームだったんですね。

しょう先生:「人は誰しも、少なからず強みを持っている」と思っていますが、今回のメンバーはまさに、お互いを否定せず、意見を出し合えるメンバーでした。

佐々木:理想的な関係性ですね。SWのファシリテーションにおいて、しばしば「重要なのはアイデアではなく、チームだ」という話がなされますが、たましるのチームはまさしく、それを体現していたと言えましょうか。

精巣がんを知ってほしいという医師の想いから結成したチームは、安定感抜群だった。

そばで見守っていた運営メンバーから見ても、「他のテーマにピボットしたとて、このチームならきっと、しっかりとアクションを積み重ね、最終ピッチを迎えるに違いない」

そんな風に、素直に思ってしまうほどに。

#5.精巣がん啓発プロジェクトの裏側——"利益だけじゃない"意思決定

佐々木:2日目からは、顧客となってくれるかもしれない人の声を聞きに行ったりしたかと思いますが、具体的にはどのように進めていったんですか?

しょう先生:お昼前の時点で、「知っていますか?精巣がん」というタイトルでWEBアンケートを実施しました。15歳~30歳の男性がメインのターゲットではありましたが、全男子対象で精巣がんや、精巣付近の病気をより知って貰うためのアンケートです。

佐々木:なるほど!「精巣がんについて、もっと知ってほしい」という想いは、ある意味、初日のピッチ+アンケートを行った時点でもう既に、ビジネスを始めずとも早々にスタートはしていた訳ですね。

目的を果たすための方法として、きっちりと活かしていらっしゃって、流石です。

SWを複数回経験に渡って経験してきたプレイヤーであったとしても、

「54時間しかない、とにかく急がなくては」と、街頭インタビューやアンケートを即座に実施することに固執してしまうことがある。

事前のアンケート設計が甘くなったり、やや雑なアンケート依頼文を流してしまう……。

そんな状態に、気づかぬうちに陥ってしまってはいないだろうか。

運営側としても、とにかく先ずはActionしてみることを促すことは少なくない。

しかしながら、貴重な回答時間をいただくからには、不必要な情報は集めない・こちら側からも有益な情報を出来る限りお届けする・しっかりと御礼と感謝を伝える……そういった真摯な姿勢を示すために、少しだけ立ち止まる時間を設けても良いのかもしれない。

当時、Googleフォームでのアンケート作成を行った

本来の目的を見失わず、アンケートに答えて下さる人の存在・ありがたみを胸にアクションをすれば、優勝に一歩近づくだけではなく、

その後のアクションを支えてくれる人の数も、きっと増えていくに違いない。

#6.精巣がん啓発プロジェクトの裏側——"利益だけじゃない"意思決定

コーチングの際、しょう先生が持参した精巣の模型や、チームで試作した簡易的なPoC(靴下にスーパーボールなどを入れた簡易的な解説用キット)を見せながら、精巣がんの症状や自身の想いを真摯に伝えていた。

そのため、外部コーチの方からは「精巣がんについての詳しいお話を聞けて、こちら側としても大変勉強になった」と、ありがたいコメントを頂戴することが出来た。

とはいえ、街頭インタビューは会場外で行われていたため、運営メンバーもその全貌を知らない。果たして、顧客のどんな声を集め、具体的なビジネスモデルへ昇華したのだろうか。

佐々木:多くの人に自分たちのアイデアを伝え、沢山のフィードバックをいただく場面があったかと思いますが、しょう先生の心に響いた言葉や出来事など、今でも思い出せるような印象深いエピソードがあれば、ぜひ教えていただけますか?

しょう先生:インタビュー・アンケートにおいては、特に「精巣がんの初期症状が気づきにくいことに驚いた。解説用キットで感触を知ることができ勉強になった」という声を多くいただき、解説用キットを広めていきたいというアイデアへと繋がりました。

コーチングでは、社会的課題解決に取り組む視点(本業が別にある企業が取り組む社会貢献活動としての事業、SDGs推進のひとつとして据える事業、社会課題解決自体を目的とした上でビジネスで解決を目指す企業など)が複数あることを学び、たとえ大きな利益が出せないとしても取り組みたいと、舵を切るための勇気をいただきました。

SW釧路においては毎年、起業経験・豊かな経験をお持ちの強力なコーチ陣を迎えている。各チームのビジネスモデル構築から、チーム内のコミュニケーションに至るまで、たくさんの厳しくも温かい言葉をもらうための時間を設けている。

#7.継続した、ALL ACTION!の内容とは

SW釧路の開催終了後、釧路町青少年育成協会子ども会を運営する方からお声がけをいただき、「お医者さんって、どんな仕事?」というテーマで、気軽に参加できる講話を行った。

※既に、開催終了したイベントとなります(※画像は、当時の案内チラシ)

#8.釧路との関わりと、さらなる海外での活躍

佐々木:SW釧路2ndが終了してから早いもので約2年半(※取材当日は、2026年3月25日)が経過しました。今でも、釧路との繋がり、チームメンバーの皆さんとの交流は続いていらっしゃいま すか?

しょう先生:釧路が好きなので毎年訪れています。つい先日、当時のチーム(たましる)のメンバー とも連絡を取り、当時のことを振り返りました。

佐々木:今でも釧路に足を運んでくださり、メンバーとの交流も続いているんですね!運営メン バーかつ、釧路っ子としては嬉しい限りです!!

優勝時に撮影された、当時の記念写真。

幣舞橋から望む、釧路港の夕焼け。

#9.SWの3日間が終わった後も——繋がる出会いと経験

佐々木:アクションを続けていると、転機が舞い込みますよね。私自身もSWがキッカケで転職し、偶然にも同じく関東に来ていたからこそ、今日こうして、しょう先生に会いに駆けつける時間を即座に確保できた訳ですし……。まさか、大船でインタビューすることになるとは、全く想像していま せんでしたが(笑)

しょう先生:そうですね。SWでの経験を経ていろいろなバックグラウンドの方と目標に向かって協力するという当たり前のようで難しいことの能力が鍛えられたと強く思っています。ここ最近でも学会で初めて出会った先生と意気投合して一緒に宇宙医学に関する活動をすることになったりとい ろいろな方とコラボレーションする力が身についた気がしています。

佐々木:現在、しょう先生が新たに取り組まれているという「宇宙医学」(宇宙空間が人体に及ぼ す影響を解明し、その適性、順応、保護などを研究する学問)のお話も、個人的に大変興味深い です。ほんとうは宇宙医学についても詳しくご紹介したいところですが……。あまりにもボリュ—ミ な記事となりすぎてしまいますし、なによりも取材時間と私の知識量が足りず(涙)やむを得ず今回の記事内では割愛させていただく形となりますが、またぜひ、別の機会を設け、お話を詳しく お聞かせください!

編集後記

今回のインタビュ一を通じて、改めて感じたことがあります。

それは、Startup Weekendは「起業する人のためのイベント」ではなく、「何かを変えたい」と思った人が、一歩踏み出すための場所なのだということ。

54時間という時間は、確かに短くもあり、長くもあります。
仕事が忙しい、経験がない、自分にできるのか分からない——
そんな不安を感じる方も、きっと多いのではないでしょうか。

けれど、しょう先生のように、日々の仕事の中で感じた違和感や想いを持ち寄り、誰かと対話し、形にしてみるだけでも、確実で、大きな一歩になります。

たとえ起業に至らなかったとしても、
そこで得た気づきや出会いは、思いがけない形で、その後の人生に繋がっていく。

この記事を読んでくださったあなたが、
「ちょっと気になるな」「一度くらい参加してみてもいいかも」
そんなふうに思っていただけたなら、とっても嬉しいです。


次に、人生を変える一歩を踏み出すのは、あなたかもしれません。

Profile

野々山 将

1994年生まれ。神奈川県横浜市出身。泌尿器科医。
横浜市立大学医学部医学科卒業。
北海道、神奈川県各地の病院で勤務。

Event Guide

Startup Weekend 釧路に参加するなら

プレイベントではアイデア作りの雰囲気を体験でき、本番イベントでは3日間でアイデアを形にする挑戦に参加できます。

プレイベント

プレイベント

2026/5/16 (土)

6月開催の Startup Weekend 釧路に向けて、アイデア作りを楽しく体験できる導入イベントです。

  • 全国で実践されている Startup Weekend 流のアイデア作りを体験できます。
  • アイデア創出ワークショップで、仲間と一緒に発想を広げられます。
  • 講師は NPO法人 StartupWeekend 理事の中本 卓利さんです。

まず雰囲気を知りたい方向け

プレイベントに申し込む

本番イベント

本番イベント

2026/6/19 (金) - 2026/6/21 (日)

3日間でアイデアを形にしていく、Startup Weekend 釧路の本番イベントです。

  • 初日のピッチから始まり、共感した仲間とチームを組んで最終日に発表します。
  • 会場はペンギンファーム(釧路市北大通三丁目7番3号)です。
  • 3日間参加の方には五食と飲料が付き、途中参加・途中退出にも対応しています。

本気で3日間やり切りたい方向け

本番イベントに申し込む